高周波。前回↓の続き。 scand.hatenablog.com
インピーダンス整合
インピーダンス整合とは、伝送線路において負荷に最大の電力を伝えるための条件である。下図のように、特性インピーダンス $Z_0$ を持つ線路とインピーダンス $Z_L$ の負荷を接続した回路で考えてみる。
ここでキルヒホッフの法則より、電流 $I$ は
\[I=\frac{V}{Z_0+Z_L}\]
電圧 $V_L$ は
\[V_L=\frac{Z_L}{Z_0+Z_L}V\]
となる。
\[Z_0=R_0+jX_0\]
\[Z_L=R_L+jX_L\]
のようにインピーダンスを実部(抵抗)と虚部(リアクタンス)に分けておくと、負荷での有効電力 $P_e$ は、
\[P_e=Re[V_LI^*]=\frac{R_L}{(R_0+R_L)^2+(X_0+X_L)^2}V^2\]
で表せる。( $I^*$ は $I$ の複素共役)
この $P_e$ を最大にする負荷 $R_L$ と $X_L$ の値が必要となる。まず、リアクタンスはマイナスの値をとり得るから、
\[X_L=-X_0\]
としてリアクタンス部分を0にできる。
すると残りは
\[P_e=Re[V_LI^*]=\frac{R_L}{(R_0+R_L)^2}V^2\]
となる。これを $R_L$ で微分すると、
\[\frac{dP_e}{dR_L}=\frac{R_0-R_L}{(R_0+R_L)^3}V^2\]
となるから、 上に凸の関数であり $R_L=R_0$ で極大(最大)値をとることが分かった。グラフにすると下記のようになる。
よって、
\[Z_L=R_0-jX_0=Z_0^*\]
が負荷での有効電力を最大にする条件、インピーダンス整合条件である。
反射係数
後進波(反射波)に対する進行波の係数は反射係数 $Γ$ と呼ばれる。
上記の回路で、伝送線路における電圧を速度 $v$ の進行波と後進波に分けて考えてみる。
進行波の振幅を $V_i$ 、後進波の振幅を $V_r$ とすると、 $V_L$、 $I_L$ は次式
\[V_L=V_i e^{-j\frac{ω}{v}l}+V_r e^{j\frac{ω}{v}l}\]
\[I_L=\frac{V_i}{Z_0} e^{-j\frac{ω}{v}l}-\frac{V_r}{Z_0} e^{j\frac{ω}{v}l}\]
となる。これをオームの法則から得られる $V_L=Z_L I_L$ に代入すると、
\[V_i e^{-j\frac{ω}{v}l}+V_r e^{j\frac{ω}{v}l}=Z_L(\frac{V_i}{Z_0} e^{-j\frac{ω}{v}l}-\frac{V_r}{Z_0} e^{j\frac{ω}{v}l})\]
\[V_r=V_i\frac{Z_L-Z_0}{Z_L+Z_0}e^{-2j\frac{ω}{v}l}\]
となるから、反射係数 $Γ$ は、
\[Γ=\frac{Z_L-Z_0}{Z_L+Z_0}\]
で表せる。つまり、インピーダンス整合している状態とは、反射波が最も小さくなっている状態と言い換えることもできる。反射波が最小のとき、電力を最も効率よく伝えられるのである。